北海道の東にある置戸町で生まれる「オケクラフト」。 そのたおやかな風貌となめらかな木肌のさわりごこちは ほんわかとこころを柔らかくしてくれます。 「用の美」を追求した工業デザイナー秋岡芳夫 氏と置戸町の出会いがあり 木目がとても美しいながらも使い道が限られていた "あて材"を上手に活用して作ることから始まりました。 オケクラフトは厳しく美しい"木のマチ"から 職人たちの手仕事で生み出されます。
北海道の東部、大雪山の東端に接する置戸町。 まわりを山に囲まれたこの町は、面積の8割以上が森林です。 昔から林業の町として発展してきました。 美しい置戸湖や滝があって 近くには常呂川の清流に接した勝山温泉もあり 主に酪農・農業・林業を産業としています。 冬はとても寒く、内陸性の気候から 昼夜の寒暖差が非常に大きいのが特徴です。 急激な寒さから木の内部の水分が凍って膨張し 幹が耐え切れずに割れて裂ける『凍裂』が見られることもあり その澄んだ音が森に響きわたるといいます。
ぶきっちょの家ができました。 むかしむかし、オケクラフトが生まれる前のお話です。 『木に親しむ日』として、置戸町の中央公民館の一室で 木のおもちゃづくりが始まりました。 それから古い住宅を改造した、公民館分室『ぶきっちょの家』ができて 木工好きの人たちが気軽に集まれる場所ができたのでした。 雪が積もる寒い北欧で、視察の一行は種の素をみつけます。 むかしから林業が盛んだった置戸町でしたが 30年前くらいから、だんだんと安い外国の木材に押されて 影響を受けるようになってきてしまいます。 そんな頃「北欧の暮らし方を学ぼう」と 自分たちのまちと同じく雪が積もる、寒冷地の北欧に視察に行った若者は 寒い冬でも遊べるように、木でできた遊具がある公園を見て 木を暮らしに活かしていることに刺激を受けたのでした。 まちを元気にする種まきは、公園から始まりました。 さっそくLLOG(ログ・ランド・オケト・グループ)というグループを作って 置戸の木を見直そうと公園や遊園地に木でできた大型の遊具を作りました。
置戸町が秋岡さんと出会って、オケクラフトの種がぐんぐんふくらみます。 北欧視察の翌年には、使いやすく且つ美しいデザインである "用の美"を追求して工業デザインのシーンでご活躍中であった 秋岡芳夫さんを招いて、『木と暮らしのデザイン』という講演会を開催します。 このときに「地域素材に知恵と技を加え、暮らしに役立つ工芸品づくり」という 秋岡さんの提案があり それまでは使えなくて厄介者とされてきたアテ材で 木の器を作るアイデアにたどり着くのでした。 アテ材は加工がしづらいけども 実は濃淡がはっきりしていて木目が美しいのです。 置戸のまちづくりを考えていたLLOGのメンバーたちは動き出します。
時松さんの技術で、オケクラフトの種はどんどん成長します。 実際の製品作りでは木工ロクロ技術の第一人者であり デザイナーでもある、時松辰夫さんが加わりました。 平成3年には大分県由布院に『アトリエときデザイン研究所』を開設して 平成20年日本クラフトデザイン協会の第47回日本クラフト展にて 経済産業大臣賞・日本クラフト大賞を受賞した人物です。